自らの意思でトイレに行き、排泄することができないと、患者さんのQOLは大きく損なわれます。排泄機能の回復とトイレ動作の獲得は、在宅復帰を目指すリハビリテーションの最重要課題の一つだと当院は考え、入院後早期から取り組むことを徹底してきました。
この排泄に関するリハビリテーションは、多くの病院では重視されず、十分には行われていません。それどころか、医療者や介護者の都合で、尿道カテーテルが不必要に長期留置されていたり、テープ式のオムツが使用されていたりするのです。このことは患者さんのQOLを損なうだけでなく、在宅復帰の大きな障害となってしまいます。尿道カテーテルが本当に必要な入院患者さんはそれほど多くはないため、当院はこれをなくすよう取り組むとともに、排泄リハビリテーションを積極的に行っています。退院後のQOLも見据え、患者さんのご自宅のトイレ環境に対応した訓練も徹底して行っています。
排泄時の体内臓器の動きは他者が把握しづらいことから、排泄リハビリテーションの難易度は高く、さらに、薬物療法、排尿・排便パターンの把握、間欠的な導尿やトイレ誘導など、多職種で協力しなければ成果を上げづらいものです。当院はチーム医療によって、こうした難しい排泄リハビリテーションを成功させるための努力を続けていきます。
排泄の習慣化と、自分の意志によってトイレで排泄する生活を取り戻すための訓練。職員は概ね決まった時間に声をかけ、患者さんとトイレに向かう。
トイレでの排泄動作を再獲得する訓練が進む。職員は患者さんの負担を軽減しつつ、自立を目指したサポートを行っている※実際はドアを閉めて行っている
手すりにつかまって自力で車椅子から便座へ移乗する動作。職員はつかまる位置等の声掛けを行う。わずかな進歩も、在宅復帰への確かな一歩だ
手洗いの意思も患者さんに確認してから手洗い場へ誘導。狭いトイレ空間での動作訓練は、実生活に直結する重要なプロセス。職員が丁寧に支えながら実践が続く
リハビリルームへ向かって廊下を進む。病棟で過ごすあらゆる時間を日常生活に復帰するためのリハビリの機会として捉え個別に計画が立てられている
トイレでの自力排泄のための筋力を強化する訓練。患者さんに合わせたプログラムを継続的に提供している
腹筋や骨盤底筋群を鍛える。当院では、排泄に関連する筋力をつけるリハビリテーションにも力を入れている
患者さんに声をかけ、反応などから臨機応変に負荷レベルを調整し、訓練を進める職員
訓練後に見られた患者さんの笑顔。一緒に達成感を得た職員からも笑みがこぼれた
当院の診療指針5「自分の意思でトイレに行き排泄することを目指す」についてご紹介しました。次回は、診療指針6「入院を機に必要な薬を見直す」についてです。ぜひ、ご覧ください。
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