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診療指針1|廃用症候群予防の徹底

廃用症候群予防を徹底します


 廃用症候群は、不必要な安静や運動量の減少により身体機能が衰え、心身の様々な機能が衰えてしまうことをいいます。

 廃用症候群予防は、日本ではあまり注目されていませんが、当院は病院で必ず取り組むべきこととして考え続けてきました。廃用症候群予防のカギとなるのは、できるだけ早い段階からベッドを離れる「離床」です。当院では8〜10時間程度の離床を実践しており、できる限り長時間の離床を促して廃用症候群を防ぐことが、当院の常識になっています。

 一方、医療界にはいまだ「入院したら安静が基本」という古い常識が根強く残っています。しかし実は、安静が必要な病態というのは少なく、多くの病態では安静を避け、離床すべきとされています。特に高齢者の場合は廃用症候群の進行が早く、安静を続けると寝たきり状態に陥ることも少なくありません。

 在宅復帰を目指す病院で、廃用症候群予防を行わずにリハビリテーションをするのは本末転倒です。廃用症候群による心身機能の低下を防ぎながら、機能向上のためのリハビリテーションを行うという、よく考えれば当たり前と思えることをしっかりと行う必要があります。

 単に離床時間を長くするだけでは、患者さんが時間を持て余してしまうかもしれません。そのため、各病棟に配置された離床コーディネーターを中心に「ただ起きているだけではない」目的のある離床を促し、離床時間が楽しく、意義深いものになるよう努力する。ここにも当院の姿勢が表れています。

ほぼ毎日お見舞いにくる息子さんも一緒にリハビリテーションのひと時を過ごす

御年102歳になる患者さんには、暮らしの楽しみを感じてもらえるように心がけている。この日は天気が良く、窓から注ぐ西陽が暖かかった。窓際の植木鉢に水をやりながら、ゆっくりと身体を動かす

食堂でみんなと一緒に食事することは、患者さんの心のケアにもつながっている。実際に、病室でひとりで食べていたときより、食べる量が増える患者さんがたくさんいるという。また、体を起こし足を下ろして食べることによって、誤嚥リスクも低下する

リビングルームで、思い思いの時間を過ごす。食事の合間や就寝時間の前など、うつらうつらしてしまいがちな時間帯も、患者さんがベッドから離れやすくなる工夫をしている

元の暮らしに戻るための、第一歩を踏み出す。リハビリテーションによって正常に動いていた筋肉と関節の動きを、もう一度身体に覚えさせていく

玄関からリビング、キッチンまで一般住宅を再現するADL訓練室*。退院が近い患者さんは、ここで自宅生活に戻ることを想定したリハビリテーションを実施する。この日は「前日に料理した昼食の後片付けをする訓練」が行われていた(*ADL:Activities of daily living、日常生活動作)

転倒の危険性や心臓への負担、血圧の上昇など、「起きる」ことに伴うリスクに対する配慮は欠かせない。リハビリテーションの合間に行われる血圧と心拍数のチェックをするときも、「今日はいいお天気ですね」「お子さんはどうされていますか」となごやかな会話が交わされていた

リハビリテーションを終え、しっかりとした足取りで病室まで戻る患者さん。作業療法士は敢えて手は貸さず、患者さん自身が歩行器だけで歩けるように促していた。廊下には、歩行中に休める椅子も用意されていた

重度の障害を負った方や認知症を患っている方など患者さんの状態はさまざま。重度の疾患で身体を動かせない患者さんにも、できるだけ「寝たきり」にさせないように離床を促している

リハビリテーションから病室に戻る道すがら、廊下の窓から見える景色に立ち止まる。眉山を指差し、思い出話に花が咲くひととき



当院の診療指針1「廃用性症候群予防の徹底」についてご紹介しました。次回は、診療指針2「身体抑制の廃止」についてです。ぜひ、ご覧ください。

【関連記事】
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・特集 私たちがいま考えていること「患者がベッドにいない病院

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