摂取する栄養が不足していたり偏っていたりしていると、病気と闘う力も、リハビリテーションにより身体機能を回復させる力も養うことができません。いくら最新の治療を行っても、栄養状態が悪ければ良好な成果は期待できません。そのため当院では、栄養状態の改善は疾病治療と同時に行うべき極めて重要な取り組みとして位置づけています。
食事が十分に摂れない患者さんに対しては、管理栄養士が訪問して声を聴き(ミールラウンド)、好みや状態に応じて食事内容をアレンジします。あらゆる状態の患者さんに適切な栄養を提供するために、嚥下調整食や付加食など豊富な食形態を用意しています。付加食のバリエーションが約80 種類もあるのは、ほかにはない当院ならではの特長でしょう。献立以外でも、患者さんが食べたいものや食べられるものがあれば、当院で作ったり買ってきたりして対応します。家庭の味なら食べられる患者さんの場合は、ご家族からの持ち込み食も積極的に受け入れます。このように、患者さんが少しずつでも食べる量が増えるよう柔軟に工夫するのが、当院の食事に対する姿勢です。
栄養面だけではなく、「楽しみ」としての食事も重要視してきました。年間 20 回の行事食や週 1 回の郷土料理、献立・調理コンクールで入賞した献立など、季節感や変化に富んだ食事を提供。患者さんの声に耳を傾けながら、日々の食事を楽しめるよう工夫しています。
※以下、当院および関連施設のおいしい食事を提供するための取り組みの写真をご紹介します。
この日のメニューは、2023年に「魚料理」をテーマに行われた献立・調理コンクールで入賞したハワイの「ポキ丼」。仕込み室では、マグロとアボカドをサイコロ状にカットする作業が続いていました
仕込み室での下処理を終えた食材を調理室に受け渡すパススルー冷蔵庫
それぞれの持ち場ですばやく正確に調理する調理師たち。厨房全体のチームワークがひとつの食事をつくりあげる流れを生み出します
平成医療福祉グループでは、必要な栄養量を満たすための付加食を80種類以上用意している。飲料、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、主食(麺類など)、おかず(温泉卵、豆腐類、マグロの刺身など)、お菓子、ごはんのおとも…と多岐にわたる
患者さんの栄養状態に合わせて、クリームベース(粉あめ)、プロテイン、MCTパウダー(中鎖脂肪酸)など、特定の微量元素や栄養素を補給するオーダーを受け取ることも
温かいものと冷たいものを分けて運ぶ「温冷配膳車」に、ひとつずつ食事を正確に納めていく。最後は管理栄養士がチェックしたのち病棟へ運ばれます
※平成医療福祉グループでは、2012年から「献立・調理コンクール」を実施しています。入賞した献立を同グループ内で提供。患者さんに楽しんで食べてもらえるメニュー開発のための取り組みであると同時に、管理栄養士と調理師が調理の腕を競い合い、技術を高め合う場でもあります。以下、献立・調理コンクール(2023年開催)の写真をご紹介します。
2023年度献立・調理コンクールにて、入賞者を発表する堤亮介栄養部長
デザートの試験の課題、ホールケーキのデコレーション
盛り付けの試験で問われるのは、見本通りの美しい盛り付け
卵の試験では、錦糸卵の幅をミリ単位でチェック(!)
当院の診療指針3「みんなにうれしい食事の提供」についてご紹介しました。次回は、診療指針4「口から食べられる可能性を最後まで考える」についてです。ぜひ、ご覧ください。
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「おいしく、美しく、時間に正確に。病院の食を支える調理師の仕事とは」